チベット医学は、中国の中医学(漢方)、インドのアーユルヴェーダ、イスラムのユナニ医学と並ぶ 世界四大伝統医学のひとつ です。伝統医学というと、現代の日本では「過去のもの」という印象を持つ人も多いようですが、実際には現在でも一般的に利用され、研究、発展が進められている立派な医学体系です(特に、漢方などは近時日本でも見直されはじめていますよね)。
チベット伝統医学が西洋近代医学と異なる特徴のひとつに、「肉体の患部のみを看るのではなく、肉体と精神の両面を看てその全体的なバランスを整えることを重視する」 点が挙げられます。
たとえば「ストレスが重なると身体の免疫機能が衰え、風邪をひいたり、体調を崩しやすくなる」など、最近では西洋近代医学の側面からも言われるようになった事柄が、チベット医学では古来、基本的な考え方のひとつだったりします。
肉体の全体的な働きと精神のバランスを取ることは当然、治療においても重視され、その細かな方策は現代に至るまで脈々と受け継がれています。
そのひとつが お香の調合方法 です。
一部のチベット香は 身体と精神の調子を整えることを目的として作られています。古代からのレシピを厳密に守って作られるそうしたお香には、当然、近現代の材料である化学薬品を使用することは許されません。
たとえば、癒し香 といわれるものがあります。ヒーリング効果の高いそうしたお香が、現地では不眠症や鬱病など精神由来の病気を治療したり、ストレスを取り除いて心身のバランスを取り、自然治癒力を高めるために使用されます。
私が親しくしているチベット香メーカーの社長は、「なによりも身体のことを考えてお香を作っている。もちろん香りの質は大事だが、身体によい 最高品質の材料を使い 丁寧に作ったお香には、自ずと香りのレベルも伴ってくる」と言っています。その真摯な姿勢を私は心から尊敬しています。